科目名:放射光利用研究概論(物性領域、未来領域の大学院学際選択科目)
授業コード:290711 時間帯:2学期木曜5限(16:20-17:50)
場所:基礎工B102講義室(B棟1階

授業の目的
 今後アカデミアのみならず広い意味での産業分野でも利用されることになるシンクロトロン放射光とその実践的利用研究について学び、シンクロトロン放射光利用研究についての実践的かつ幅広い知見を得ることを目的とする。


到達目標
将来アカデミアや産業界で自分が研究にたずさわる際に、必要に応じて
適切な放射光利用研究を計画できる為の基礎的な能力を修得する。


講義内容
 SPring-8に代表される高輝度シンクロトロン放射光は極めて貴重な波長可X線光源としてとらえることが でき、科学・工学における様々な分野での学術的な最先端実験研究のみならず民間企業による産業利用研究にも盛んに利用されている。ここでの産業利用研究とは必ずしも多くの人が想像するような最先端材料開発の為の研究のみならず、例えば環境への負荷を最小限にするような材料開発など環境科学への実践的アプローチのような研究も含まれている。これらの研究について、現場にいる理化学研究所播磨研究所(理研)もしくは高輝度光科学研究センター(JASRI)の方々から講義していただき、シンクロトロン放射光利用研究についての実践的かつ幅広い知見を得ることを目標とする。

授業計画
 以下の順序で進める予定であるが、1以外の項目については独立性が高いこともあり順序を変更することもあり得る。(かっこ内は担当者と本務先を示す)


1.シンクロトロン放射光とその特徴・有用性(阪大基礎工 関山明)
シンクロトロン放射光の発生原理と特徴及び光源としての有用性について概略を講義する 106


2.共鳴X線回折の基礎と応用(理研 田中良和)
10月20日
共鳴X線回折では、偏光特性が重要である。偏光を扱うための基礎とその応用について講義する


3.X線領域における非線形光学現象の基礎と応用(理研 玉作賢治)10月27日
X線領域における非線形な光学応答について、物理的な背景を考察すると共に、現在考えられている応用研究について概説する

4.時間分解X線計測法の基礎と応用(理研 田中義人) 11月10日
放射光のパルス性、高輝度性を利用した時間分解X線計測法の基礎と応用研究について概説する

5.X線分光による物質研究(JASRI 室隆桂之)11月17日
軟X線を励起光とする光電子分光方や吸収分光法の原理を解説し、物質研究への応用例を紹介する

6.放射光を利用した超高圧構造物性研究(JASRI 大石泰生)11月24日
放射光X線回折を主力とした超高圧力下での物質の構造物性研究と、最近の測定技術開発について紹介する

7.X線磁気円二色性分光による磁性研究JASRI 鈴木基寛)12月1日
放射光による磁性研究の手法であるX線磁気円二色性分光実験について、原理、装置、応用研究を網羅する

8.X線マイクロ/ナノイメージングの基礎と応用(JASRI 竹内晃久)12月8日
放射光X線を利用した顕微イメージングについて、その基礎、原理技術を 解説し、多岐分野にわたる応用例を紹介する

9.XXAFS計測法の基礎と応用研究JASRI 宇留賀朋哉)12月15日
非晶質物質の構造や電子状態の研究に広く用いられているXAFS計測法の基礎と応用研究例の紹介を行う

10.X線回折法によって表界面・薄膜・ナノ構造の何が、どこまで分かるか(JASRI 坂田修身)12月22日                                 自分で測定するときに参考となるポイント、ノウハウを紹介する。結果を解釈するときの考え方を講義する

11.放射光X線回折による構造物質科学の研究(理研 加藤健一)1月12日
放射光X線回折を用いた基礎研究と応用研究について、構造物質科学の立場から概観する。

12.赤外放射光の特徴と応用(JASRI 池本夕佳) 1月19日
一般的な赤外熱輻射光源と比較した場合の赤外放射光の特徴と、国内外の放射光施設における赤外放射光の応用研究を紹介する

13.まとめ(J阪大基礎工 関山明) 1月26日

参考文献
 シンクロトロン放射光についての入門的な参考書:大橋治彦・平野馨一編「放射光ビームライン光学技術入門ーはじめて放射光を使う利用者のためにー」日本放射光学会 2008(この本は図書館にはあるが書店にはない)